DETAIL
オーナー
70代ご夫婦 元化学メーカー役員
敷地と概要
東京湾岸の整然と都市計画された住宅街の中、古くなった一戸建て住宅の建替え。
元の家の間取りを踏襲しながらも、光庭をつくり、壁の一面を斜めにしたプランにより、独特な外観を持つ全く異なる家となりました。
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ご要望
・主に1Fだけで生活できるようにしたい。
・夫婦の寝室をそれぞれ独立させながらも隣り合わせたい。
・趣味の日本画を描くために和室が欲しい。
・収納量を可能な限りたくさん確保したい。
・リビングとつながったオープンなキッチンにしたい。
・バルコニーでビールを飲みたい。
・防犯性を重視したい。
・庭の梅の木や大事に育てた草花を残したい。
全体計画
プランニング上1Fの面積が大きくなるため、家の中心に光庭を設け、その周りに個室や水まわりを配置することで、隅々まで光と風が行き渡る全体計画としました。
光庭の周囲は、廊下と個室の通路としてぐるりと回れるため、用が無くてもぐるぐると歩き回りたくなってしまうような空間となりました。
また、敷地は南側を隣地の建物にふさがれているため、元の家は直射日光が指すのは午前中11時頃までで、部屋の奥は暗く、日中でも照明が常時必要な状態でした。
そのため、新しい家の計画は、東に向いた壁面を南側に傾け、一部の天井と窓を高くすることで太陽の光を大きく取り入れられるようにしました。
斜めの壁・大きな窓・光庭により、部屋の隅々まで明るい家になりました。光庭を通じて家中に風も吹き抜けます。
1F
1Fは光庭を中心として、玄関・リビング・ダイニング・キッチン・寝室2つ・洗面・浴室・トイレがぐるりと取り囲むプランです。
引戸を開け放てば全ての部屋がつながる開放的な一室空間ですが、閉めればそれぞれの個室が独立した、1Fだけで2LDKの生活空間となります。
扉は全て壁の中に格納される引戸としたため、引戸を全て開けば扉の無い家に見えます。
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引戸を閉じて部屋を区切っても、光庭を通じて部屋同士はゆるやかにつながり、家族同士の気配を程良く感じられます。
また、夜に建物外周の窓を全て閉め切っても光庭の窓は開け放つことができ、高い防犯性と通風・採光を両立しています。
リビング・寝室の南側は天井を高くして窓を大きく取り、冬場には部屋の奥まで太陽の光が届き、夏場は大きな庇で直射日光を避けられる計画としました。
2F
2Fには光庭をはさんで和室と、もうひとつの寝室があります。
趣味の日本画を描くため、また客間としても使う和室は、フチナシタタミを敷き詰め、壁面全てを押入れとしました。
寝室からは開放的で眺めの良い、船の甲板のような形のバルコニーに出られます。
絵の道具や箪笥等も融通無碍に収納できる納戸もつくり、大容量の収納を用意しました。
キッチン
キッチンは立体的で高密度な収納を持つシステムキッチンのユニットを組み込んでオープンなキッチンとしました。
背後は壁面全体を床から天井まで収納にし、大容量の収納を確保しました。
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洗面と浴室
洗面は大きな3面鏡にもなる収納を持つオープンなカウンターに、床から天井までいっぱいの収納も作り付けました。
浴室は、極めて汚れにくいホーロー製のシステムバスです。真っ白い室内と大きな窓で、機能的かつ明るい浴室になりました。
素材
床は主にナラのムク材にオイル仕上げ、水まわりは肌にやさしいコルクタイルを用いました。
インテリアは主に真っ白な塗装仕上げの中、光庭の柱と引戸に木材を使用したことで、木の多様な質感も楽しめる住まいとなりました。
外壁は真っ黒でがっちりと守られたイメージですが、家の中に入ると明るく和やかな雰囲気を感じられる、コントラストの強い家です。
アート
リビングと寝室の壁面には、画家のオーナー親族が描いたカラフルなオイルパステル作品が、空間に楽しい彩を加えています。
また、和室・書斎にはオーナー自身の日本画や掛け軸を展示する予定です。
庭
2台の駐車スペースを確保しつつ、植栽エリアを明確に区切り、花・実・紅葉を楽しめる樹木を高密度に植え込みました。
また、元の庭で育てていた梅の木や草花の多くも保存して植え直し、丹波石の延段や塀も一部残すことで、長年住んだ元の家の記憶も引き継ぎました。