FURUKAWA DESIGN OFFICE

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COLUMN 家づくりコラム

キッチンのデザイン


まず今回は、キッチンのデザインについてです。
今や住宅の中心はキッチンであると言っても過言ではありません。
家族やお客さんが集まる場所は、キッチンとダイニングテーブルである場合がほとんどです。
この空間のデザインが家の居心地の大部分を決定付けるのです。
機能性やメンテナンス性、居住性、材料、機器等あまりにも多くの要素が集中する場所であるため、そのデザインは住宅の中では最も難しい部分ですが、同時に最もデザインするのが楽しい部分でもあります。

家のプランや作り方によって雰囲気やスタイルは毎回全く異なりますが、キッチンのデザインにおいて大事にしている要素を記してみようと思います。
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キッチンをデザインする場合、フルオーダーでキッチンをすべて特注でデザインさせてもらう場合や、施主の好みや予算によっては、大手メーカーのシステムキッチンを一部組み込んで、セミオーダーキッチンと呼べるものを制作する場合もあります。

いずれの場合でも、自分がキッチンを設計する際に最も重要視する要素は、主には3つあります。

1つ目は、”機能トライアングル”です。
キッチンの作業性を決めるのはシンク・コンロ・冷蔵庫のレイアウトであると一般的に言われており、この3つの要素の距離が近いことと、並ぶ順番が作業性に及ぼす影響が大きいのです。
最も良いのは、ほぼ動かずに3つの要素にアクセスできることで、これを満たすキッチンのプランはコの字型のキッチンです。
回転するだけでほぼ作業が完結する、というレイアウトです。

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しかしコの字型のキッチンは使い勝手は良いものの、大きめの正方形のキッチンスペースを必要とするため、どの家でもスペースを確保できるわけではありません。
また、システムキッチンでコの字型にしようとすると、サイズやレイアウトの制約が多く、しかも価格も高くなるため、やはりフルオーダーでつくりつけるほうがメリットが大きくなります。

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他のレイアウト、最も一般的なI型やL型、ペニンシュラ(半島)型、またアイランドキッチンの場合も、一歩づつ程度でシンク・コンロ・冷蔵庫にアクセスできれば作業しやすいキッチンとなるため、スペースや予算によってキッチンレイアウトを使い分けます。

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いずれにしても、キッチンの使い勝手とデザインの大部分を決めるのはキッチンレイアウトであるということです。

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2つめに重要視しているのは、"収納量"です。
日本の家庭において一般的に作られる料理は、和・洋・中・アジアと、ほぼ世界中の料理を作る場合が多いため、食材や調理器具・食器等も、世界中の料理用のものを所有している場合がほとんどです。その上、炊飯器や鍋、焼肉用のホットプレート、たこ焼き器等、特定の料理用の調理器具もさまざまにあります。
これは世界的に見ると非常に珍しい、日本のキッチン独自の特徴であると言えます。

一般家庭では、中国人は主に中華料理しか作りませんし、インド人もインド料理、西洋人もほぼ西洋料理しか作らない場合がほとんどではないかと思います。
したがって、海外のキッチンでは、調理道具も食器の構成もシンプルで数も少なくてすむのですが、日本の家庭では膨大になる傾向にあります。
そのため、日本の家庭で美しいキッチンを実現するためには、収納量を最大限確保することが非常に重要であると考えています。

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大容量の収納量を確保するためのプランは、まずはパントリーを用意して、いくらでも詰め込める"倉庫"を作ってしまうことです。物をすし詰めにしても良いし、床においても良いし、漬物を置いても、上からつるしても良い。
収納スペースとしてはパントリーがベストではありますが、これもスペース問題から無理な場合も多いため、次善の策としては、床から天井まで壁一面の収納を作ってしまうことが多くあります。

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また、床から天井まであるスライドストッカーを冷蔵庫の隣に組み込むと、冷蔵食品以外の食品庫となり、非常に重宝します。
下の写真では一番奥がスライドストッカーです。

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収納の中身については、あまり細かく作りつけて、”これをしまうのはここ”と決めて動かせなくしまうのはお勧めしていません。数十年の使用期間のうちには、中にしまうものも、生活習慣も、時には作り手さえもが変わってしまうこともあるため、いつでも収納場所を変更できるほうが望ましいと考えています。
作業効率や収納効率の高い配置は、使い手が常に考え続けて更新していく必要があると思っています。
キッチンには、数十年単位での可変性も重要です。

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3つ目のポイントは、”居住性”です。
キッチンの居心地とも言えます。作業していて、過ごして楽しいキッチンでありたい、ということです。
重要なのは、リビング・ダイニング空間との一体感です。

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リビング空間の一部に料理する機能がついている、という状態にしたいと考えているため、キッチン自体のデザインもシンプルでよく、リビングに溶け込むデザインとしたいと思っています。
キッチン自体はオープンでダイニング・リビングとの境目が無く、光がさんさんと降り注ぐ空間の中で庭でも眺めながら快適に調理作業ができるという状態が理想です。

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キッチンのつくりかたは、予算やプランに応じてシステムキッチンを利用する場合と、フルオーダーで全てデザインする場合があります。

フルオーダーキッチンの場合、フルオーダーだからできることが、やはりあります。
下の写真のキッチンでは、大きな一枚板の天板を使っています。また、キッチン水栓と食洗器は、ドイツメーカー製のものです。
また、壁際にコンロを持ってくることで、油が拡散するエリアを絞って清掃性を高めているのですが、リビングから見るとシンクに立つ人の後ろにキラキラした背景があるため、何か特別なステージのような場にも見えます。

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また、下のキッチンの換気扇は、横に排気をして油などを拡散させないようにしている珍しいタイプの製品です。
このようにシステムキッチンでは選べない材料や器具を使えることは大きなメリットとなります。

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また、キッチンのプランニング自体をデザインすることで、普通の家ではなかなか作れないデザインとすることもできます。
下の写真のキッチンでは、キッチンカウンターとダイニングテーブルの高さが揃っていますが、通常は機能上高さが違うためあり得ません。部屋に段差をつくって、キッチンのレベルを1段下げているため、キッチンカウンターとテーブルとの高さが揃って、テーブル面の大きな広がりと、キッチンからダイニングまで一体感が生まれています。

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また、システムキッチンを組み込んだ場合でも、下の写真のキッチンの場合、丸いテーブルつきのカウンターをデザインすることで、過ごすこともできるキッチンとなっています。

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キッチンカウンターが簡易なダイニングとなることで、ダイニングを省略して限られたリビングスペースを有効に活用しています。
写真のような使い方は、何か最高の夫婦関係のようにも見えます。

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私は小さい頃から親が共働きだったため、生活のために日常の料理をします。
現在でも、妻もフルタイムで働いているため、2人で協力して料理や片づけをする必要があります。
男のこだわりの料理やパーティー料理のような、あまり凝った料理は全くできないのですが、毎日食べるような味噌汁やご飯と焼き魚、炒め物、煮物、カレー、中華料理等、何でもない誰でも作れる料理ばかりで、凝った料理は妻に作ってもらいます。
したがって、キッチンは男も女も子供も作業しやすいつくりとなっていて、2人または3人でも作業できるようなキッチンが理想的だと考えています。

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またキッチンを片付け、掃除する係は常に自分でもあるため、キッチンをデザインする際もやはり、日常の作業性や清掃性、また十数年後にまで対応できる現実適な機能性が非常に気になります。

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買い物するところから始め、冷蔵庫に収納し、調理し、食べ、片付けるところまで、夫婦や家族で協力して、男も女も子供も料理し、片付け、一緒に過ごせるようなキッチンが理想です。
また、デザインが良いだけではなく、やはり使いやすくきれいにしやすい機能的なキッチンが好きです。
それは、家全体のデザインで実現したい目標とも一致しています。

機能性が高く、楽しく過ごせるキッチンをこれからも探求していきたいと思います。