FURUKAWA DESIGN OFFICE

株式会社フルカワデザインオフィス一級建築士事務所
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COLUMN 家づくりコラム

我が家の椅子の歴史ー1


私はおそらく、椅子マニアです。
自宅には常に必要以上の椅子があるため、妻には「これ以上置けないからもう買ってくれるな」とよく言われますが、まだまだ使ってみたい椅子はたくさんあります。
私にとっては椅子を選ぶことや使ってみることは空間デザインの仕事の一部でもあるのですが、名作椅子の売買や研究だけに関わる仕事をしてみたいとも思うほどです。

椅子と言うものは非常に奥深いモノです。
ただの1脚の椅子に、1棟の建築作品に勝るとも劣らない見所と魅力とが詰まっています。
構造・材料・仕上げ・形、それらの組み合わせによってかもし出されるキャラクターと座り心地、またその存在感まで、古今東西あまりにも多種多様な椅子が作られてきました。
19世紀末からの椅子デザインの近現代史の専門書もあるほどです。
椅子マニアは世界中に存在するのです。
その中でも不朽の名作と呼ばれるものや、デザイン業界の定番製品を中心に、自宅の椅子として使用してきたものを紹介します。

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初めて自分で購入した椅子は、定番中の定番、Eames Shell Side Chair DSW Maple Legsです。
1948年のデザインで、ミッドセンチュリーを代表する椅子です。

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よくインテリア雑誌やテレビの対談番組などで使われているので目にする機会は多いかと思います。
何年か使ってみて、またさまざまな場所に置いてみて初めてわかったのですが、プラスチック製なのに極めて座り心地が良く、何時間でも座っていられます。
よくある駅のプラスチックのベンチとは似て非なるものです。
しかも、非常に絵になるのです。
フォトジェニックとでも言いましょうか、何も無い空間にこの椅子が数脚あるだけで、空間がかわいげのある、生き生きとして楽しげな場所に見えてくるのです。
特に後ろ姿が非常にきれいな椅子です。
卵を楊枝で立てたような形のためか、食卓には特にマッチする気がします。

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また、テーブルや他のインテリアとの組み合わせも、どのようなものとでも合います。
脚が木でできているので木のテーブルにはもちろん合いますし、真っ白いモダンなテーブルなどに合わせても、少しかわいげのあるモダンなインテリアになります。
勉強部屋などに置いても非常に絵になり、用途を選びません。
プラスチック製のため価格のわりに高級感は無く、冬場におしりがやや寒いというデメリットもあるのですが、最も「使える」椅子としてどなたにでもおすすめできます。

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最近手に入れて気に入って使っているのは、これも定番中の定番ですがHans J Wegner の Y-chairとArne Jacobsen の Seven Chairです。
どちらもデンマークのデザイナーによるものです。
Y-Chairは、木の手触りとペーパコード製の座面が、夏は涼しく・冬は暖かい感触を与えてくれる、幸福感を感じられる椅子です。

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座面が広く低いため、どっかりと腰を下ろすと円形のアームにすっぽりとはまり、良くも悪くも立ち上がりたくなくなるような座り心地です。
名前の由来であるY型の背もたれが後ろ姿を美しく見せています。

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日本で作られる木の椅子のほとんどは、通常どっしりとした太いフレームの頑丈な印象のものが多いです。このYチェアも非常に頑丈ではあるのですが、木の椅子にしてはほっそりとしてややエレガントとも言える美しい後ろ姿が特徴となっています。
座り心地だけの良い椅子や、デザインだけは良い椅子、というのは国内外問わず数多く存在するのですが、座りやすさと美しさと価格をバランスさせた椅子は極めて稀なのです。

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次のセブンチェアは、世界中のデザイン建築で用いられているベストセラーチェアです。
この椅子もどのような空間にでもマッチするため、パブリック・プライベートを問わず幅広い用途に用いられていて、建築雑誌等で非常によく目にします。

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一枚の合板を曲げて作られるのが特徴で、背もたれのカーブの美しさと脚の細さがこの椅子のデザインの全てです。
合板でできているため、冬場におしりが冷えることもありません。
後ろから見ると、ミッキーマウスの耳のような愛嬌のある形です。

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デンマーク製の木の椅子は、美しさと質の高さで、普遍的な魅力を持ち、今も昔も定評があります。
日本の住空間にも非常に自然に溶け込んでくれます。

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ソファはeilersen社のものを使用しています。
これもデンマークのデザインで、馬車のボディ・シートの製造から始まったメーカーのものです。
あまりにも気に入って使っていたため、中古の家を改修する際に、ソファがぴったりはまり込むように壁の配置や家具のレイアウトを考えました。
このソファは幅が2.4mあり、奥行きも通常より広い上に足を伸ばせる部分もあるため、ソファというよりはほとんど"リビングに置いたベッド"として機能しています。
しかもファブリックの質感が非常に優れているため、ベッドよりも気持ちが良いくらいです。
座って前を眺めると庭に植えた木々の緑が広がるため、狭い我が家ながらも非常に快適に過ごしています。

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オフィスチェアもこれまで様々なものを使ってきました。
仕事で現在使っているのは、Herman Miller社 の Aeron Chairです。
設計の仕事では、あまりにも長時間座ったままPC作業や模型作業が続き、いつしか背中の凝りに常時悩まされるようになったため、椅子に異常にこだわるようになってしまいました。
20代の頃はどんな椅子に何時間座り続けても大丈夫だったのですが・・・。
今は座り心地にやたら敏感です。

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背面はメッシュ素材で、やわらかいカーブを描くフレームは金属製の鋳物です。
このAeronChairは、慣れると他のオフィスチェアには座れなくなりそうな座り心地です。
通常の国産オフィスチェアと比べると高級なため、会議室や会社役員室などで利用されることも多いようですが、これはハードワークする人にほど薦められる椅子です。

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自宅の机ではKartel社のMaui Chairを使っています。これはイタリア製です。
プラスチックなので座り心地が悪いと思いきや、形が優れているため思いのほかぴったりとはまり込み、長時間の使用でもあまり疲れません。

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イームズの椅子と同じく、形に愛嬌があるため、わりと楽しそうな仕事場に見えてきます。
自宅の机などには非常におすすめできる椅子です。

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自宅で使用しているのは欧米メーカーの椅子が多いのですが、やはり椅子はヨーロッパの数千年の椅子座の伝統にはなかなか敵わないのではないかと、よく思います。
日本は良くも悪くもやはり床座の国です。
椅子1脚にかける情熱もお金も、日本人の比ではありません。
例えばオフィスチェアを国産と欧米メーカーとで比べた場合、デザインの違いもありますが、あまりにも耐久性の前提が違いすぎるのです。
AeronChairのメーカー保障期間は、なんと12年です。そのために価格も数倍するのですが。
公園のベンチなどでも、欧米製のベンチはデザインが良いばかりでなく、背もたれのフィット感が抜群なのです。
(写真のベンチはマンションのランドスケープで使用したスペインのMOBLES114社のMarinaBench)
まだまだ欧米から学ぶべきものは多いようです。

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様々な椅子を使ってみて、また世界のあちこちで椅子のある空間を体験してみて思うのは、"居心地の良い空間には、必ず座り心地の良い椅子(もしくはソファ)がある"ということです。
居心地の良い空間を作る最も重要な要素のひとつは、"良い椅子"なのです。
私はよく地元国立のスターバックスのテラス席に、用も無く妻とただぼんやり過ごすためだけに訪れます。
スターバックスの居心地が良く人気があるのは、コーヒーがおいしくてインテリアが綺麗で店員さんがすがすがしいためでばかりではなく、そこに"良い椅子"があるからでもあります。
スターバックスは居心地を良くするために、他のカフェやレストラン以上に良い椅子を用意しているのです。
良い椅子というものは、たいてい値段はやや高いですが、もちろん座り心地が極めて良く、見た目も綺麗で、壊れにくく、存在感があり、どんなインテリアにもマッチし、いつまでたっても古くならずにむしろ愛着の湧いてくる椅子のことです。
これからもまだまだ新旧様々な椅子を手に入れて、体感してみたいと思います。

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